『闇の伴走者』(WOWWOWドラマ)

 WOWWOWドラマは、宮部みゆきの『楽園』が面白かったので最近よく試聴しています。今のところ『楽園』ほど肌に合う作品には出会えていないのですが、久々に食いついてしまいました。『闇の伴走者』は、長崎尚志『醍醐真司の博覧推理ファイル』をドラマ化した物です。漫画編集者を探偵役としたミステリー作品で、漫画業界や出版業界の事情が物語を彩るのですが、そこが一番興味深かったです。

 探偵役の一人、醍醐(編集者:古田新太)が熱く語るほどに、学問としての漫画論も確立されているのでしょう。醍醐が語る面白い”漫画”は、それはそれは読んでみたいと思うほどに魅力的です。絵がない漫画。これに近い感覚を、奥泉光シューマンの指』で感じたことがあります。音のない音楽。ある種の情熱や感情という熱量が、技術や物体を伴わなずに、実体化させる。「物語る」にはそれができるのだと気づかされます。そして理想論の中にも「美しい作品」が確かにあるのだということも。

 

 高い理想と明確なイメージを持つこと、それを実体化させることと実体化させるために全力を尽くすこと。

 

 私は各業界でトップを目指すということに、快感に近い好感を持っていました。お笑い芸人の舞台や舞台準備、舞台などです。それはなぜなのか。作品そのものももちろんですが、その作品という行為そのものから、目指すべき完成形(高い理想と明確なイメージ)を感じられるほどに高められているからではないか、と今日は思いました。

 

 ただ、後半の事件解決パートは少し物足りなく感じました。理由まではわからないのですが、何となく、構成と盛り上げどころを押さえた面白さだけでは私の感性には触れきらないのかも、と思いました。私はずっと消費側なので、「面白い・面白くない」「好き・嫌い」「快・不快」などの物差しで物を選ぶだけです。その裏に、どれほどの人や思い、時間があるかも気にかけずに。 ・・・と書きながらも、新たに新シリーズ『闇の伴走者〜編集長の条件』の視聴を開始しています。面白いですよ。古田新太がスカジャンを着て、リュック背負って走っているところが最高です。